食欲不振・体重減少——気になる症状の原因と受診先の目安
監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)なぜ精神科・心療内科の医師が全科を監修しているの?
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食欲不振(食欲がわかない・食べられない)や意図しない体重減少は、身体的な病気と精神的な問題の両方で起こります。一時的なストレスや夏バテによるものは自然に回復することが多いですが、1か月以上続く・体重が急に5%以上減った場合は、消化器疾患・悪性疾患・内分泌疾患・うつ病などが隠れていることがあるため医療機関への受診をおすすめします。
すぐに受診を考えるサイン(レッドフラグ)
以下のいずれかに当てはまる場合は、早めに受診してください。
- 1か月で体重が5%以上(例:60kg→57kg)の意図しない減少
- 食欲不振+黄疸(皮膚・白目が黄色くなる)
- 食欲不振+黒い便・血便
- 食べ物・水分が全く飲み込めない・飲み込むと痛い
- 食欲不振+激しい腹痛・お腹の張り
- 食欲不振+高熱・強い倦怠感(3日以上)
- 食欲不振+夜間発汗・持続する発熱
- 高齢者・乳幼児の急な食欲不振(脱水・重症化しやすい)
緊急度の振り分け
🚨 すぐ受診(数日以内)
- 黄疸・黒い便・血便をともなう食欲不振
- 食べ物が飲み込めない
- 強い腹痛をともなう
⏰ 1〜2週間以内に受診
- 体重が1か月で5%以上の意図しない減少
- 食欲不振が1か月以上続いている
- 倦怠感・夜間発汗・微熱をともなう慢性的な食欲不振
🏠 経過観察してよい目安
- 暑さ・疲れ・一時的なストレスで数日食欲がなく、ほかに症状がない
- 風邪・胃腸炎で一時的に食欲がないが、水分は取れている
- 薬を飲み始めてから食欲が落ちたが、処方医に確認済み
原因別の特徴
消化器疾患
胃・腸・肝臓・膵臓・胆嚢の疾患は食欲不振の重要な原因です。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:食後の心窩部痛・胸やけをともなうことが多い
- 逆流性食道炎:食後の胸やけ・酸っぱいものが上がる感じ
- 慢性胃炎・ヘリコバクター・ピロリ感染:胃の不快感・膨満感
- 胃がん・大腸がん:初期は気づかないことが多い。体重減少・便通の変化・貧血を伴うことがある
- 急性・慢性肝炎:倦怠感・黄疸をともなう食欲不振
- 急性膵炎:上腹部〜背部の痛みをともなう食欲不振(救急対応が必要なことがある)
内分泌・代謝疾患
- 甲状腺機能低下症:食欲不振・倦怠感・体重増加(食べていないのに体重が増える)・寒がり
- 甲状腺機能亢進症:食欲があっても体重が減る・動悸・汗をかきやすい(食欲不振にはなりにくいが体重減少をきたす)
- 糖尿病:著しい口渇・多尿・体重減少をともなう食欲不振は緊急の場合がある
- 副腎不全(アジソン病など):倦怠感・低血圧・皮膚色素沈着をともなう食欲不振
精神・心理的要因
- うつ病・抑うつ状態:食欲低下・体重減少は抑うつの主要症状の一つ。気分の落ち込み・睡眠障害・意欲低下をともなうことが多い
- 不安障害:慢性的な緊張・心配から消化機能が低下し食欲不振が起こる
- 摂食障害(神経性やせ症・過食症):体重・体型への強いこだわりが特徴。専門的な治療が必要
- 適応障害・ストレス反応:環境変化・悩みの時期に一時的に食欲が落ちる
がん・全身疾患
悪性腫瘍(がん全般)は初期症状として食欲不振・体重減少・倦怠感が現れることがあります。特に原因がわからない意図しない体重減少が続く場合は、内科で血液検査・画像検査などの精査を受けることが重要です。
薬剤性
多くの薬(抗菌薬・抗がん剤・解熱鎮痛薬など)が食欲不振の副作用を持ちます。最近始めた薬との関係がある場合は、処方した医師・薬剤師に相談してください。高齢者は複数の薬を飲んでいることが多く、薬剤の相互作用で食欲不振が起こることがあります。
受診する科の目安
| 症状の組み合わせ | まず相談しやすい科 |
|---|---|
| 腹痛・胸やけ・黒い便をともなう | 内科・消化器内科 |
| 黄疸・腹部膨満 | 内科(消化器) |
| 倦怠感・気分の落ち込み・意欲低下をともなう | 心療内科・精神科・内科 |
| 体重の著しい減少(原因不明) | 内科(精査) |
| 甲状腺の問題を指摘されたことがある | 内科(内分泌科) |
| 高齢者の食欲低下・体重減少 | かかりつけ内科 |
| 若い女性・体型へのこだわり | 心療内科・精神科 |
「どの科か迷う」場合は、まずかかりつけの内科を受診し、血液検査・腹部エコーなどで身体疾患を確認してから、精神科・心療内科を検討する流れが現実的です。
食欲がないときの食べ方の工夫
食欲がないときは「食べなければ」と無理をする必要はありませんが、脱水と栄養不足は避けることが重要です。
- 少量ずつ、食べられるものを食べる(好みのもの・冷たいもの・さっぱりしたものから)
- 水分補給を確実に(水・スポーツドリンク・みそ汁・スープなど)
- 食事時間を決めない(「食べなければ」という義務感がさらに食欲を低下させる)
- 食事環境を変える(一人で食べるより誰かと食べると食欲が増すことがある)
- 香りや食欲をそそる食品(出汁・酸味・少量の油)を活用する
- 高カロリー・高タンパクの少量食品(チーズ・卵・豆腐・プリン・栄養補助食品)
ただし、これらの工夫をしても体重が減り続ける・飲み込みにくい場合は医療機関を受診してください。
よくある質問
Q. 体重は1か月で何kg減ったら受診すべきですか?
A. 目安として、1か月で体重の5%以上の意図しない減少は精査の対象とされています(例:60kgの方で3kg以上)。特に、ダイエットや食事制限をしていないのに体重が減り続ける・疲れやすい・食欲がない症状が続く場合は内科を受診してください。
Q. 夏バテと食欲不振の違いは?
A. 夏バテによる食欲不振は、暑さによる自律神経の乱れ・発汗による電解質喪失が原因で、涼しい環境での休養・水分・電解質補給で改善することが多いです。2週間以上改善しない・体重が著しく減る・倦怠感が強いまま・ほかの症状をともなう場合は、夏バテ以外の原因を考えて受診してください。
Q. 気分が落ち込んで食欲もない場合、何科に行けばいいですか?
A. 食欲低下・体重減少・気分の落ち込み・意欲低下・睡眠障害が重なる場合は、うつ病の可能性があります。まずはかかりつけの内科で身体疾患を除外してから、心療内科・精神科への受診を検討することが多いですが、症状が強い・日常生活に支障がある場合は、内科と並行して精神科・心療内科を受診しても問題ありません。
Q. 高齢の親が食べられなくなってきました。どうすればいいですか?
A. 高齢者の食欲不振は、薬の副作用・口腔の問題(義歯の不具合・口内炎)・嚥下機能の低下・うつ・認知症・内臓疾患など複数の原因が絡み合っていることが多いです。まずかかりつけの医師に相談し、必要に応じて嚥下評価・栄養サポート・精神科的評価を受けることを検討してください。急激な体重減少や水分も摂れない状態は緊急度が高くなります。
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監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)
参考にした主な情報源
この記事は、各学会の診療ガイドライン・厚生労働省の公開情報・Minds ガイドラインライブラリ・標準的な医学教科書をもとに、医師監修のうえ作成しています。