下痢が続くとき——「危険な下痢」のサインと受診先(内科 / 消化器内科)の選び方
監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)なぜ精神科・心療内科の医師が全科を監修しているの?
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⚠️ このサイトは診断を行うものではありません。受診先を考えるための参考情報です。下痢は感染・体質・腸の病気・全身の病気など多くの原因で起こり、原因によって相談する科や急ぎ方が変わります。
「急にお腹を下した」「ストレスがかかると下痢になる」「何週間もゆるい便が続いている」——下痢と一口に言っても、いつから・どんな便が・どんなふうに続くかで、考えられる原因も受診の急ぎ方も変わります。多くの急性下痢は数日のうちに自然に軽快しますが、なかには早めの評価が必要なものや、長く続いて生活に影響するものも含まれています。
このページでは、(1) すぐに受診・救急受診を考えるレッドフラグ、(2) 急性下痢と慢性下痢の分け方、(3) パターン別に考えられる病気、(4) 内科・消化器内科の振り分け、(5) 自分でできる対処とやってはいけないこと、(6) 受診前メモ、(7) よくある質問——の順で整理します。
1. 最優先で確認したいサイン(レッドフラグ)
次のような下痢は、原因の評価を急ぐ必要があるとされています。当サイトの結果にかかわらず、早めの受診、または症状が強いときは救急外来・119を検討してください。
- 血便(便に血が混じる・粘液と血が混じる)をともなう下痢——感染性腸炎や炎症性腸疾患などの可能性
- 38℃以上の高熱をともなう下痢
- 強い脱水のサイン——尿が極端に少ない・出ない、立ちくらみ、ぐったりする、口の中がからからに乾く(特に高齢者・乳幼児で進みやすい)
- 激しい腹痛・嘔吐をともない、水分もとれない
- 抗菌薬を使用中、または最近使った後の下痢(抗菌薬関連腸炎の可能性)
- 免疫を抑える薬を使っている・持病で免疫が下がっている人の下痢
- 海外渡航のあとに始まった下痢
とくに血便+高熱や、水分がとれないほどの嘔吐・腹痛をともなう脱水は、様子を見ずに早めに医療機関へ相談してください。高齢者・乳幼児・妊娠中の方は、脱水が早く進むことがあるため、軽く見えても早めの相談が安全です。
2. 下痢は「急性」と「慢性」で分けて考える
受診先や急ぎ方を考えるとき、まず続いている期間で分けると整理しやすくなります。
| 区分 | 期間の目安 | 多く考えられること |
|---|---|---|
| 急性下痢 | おおむね2週間未満 | 感染性腸炎(ウイルス・細菌)、食あたり、一過性の消化不良 など |
| 持続性下痢 | 2〜4週間 | 急性のまま遷延、感染後の腸の過敏 など |
| 慢性下痢 | 4週間以上 | 過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、吸収不良、甲状腺の病気 など |
急性の下痢の多くは、レッドフラグがなければ水分・電解質を補いながら経過をみるうちに軽快することが多いとされています。一方、4週間以上続く下痢は、体質的なもの(過敏性腸症候群など)から腸そのものの病気、全身の病気まで背景が幅広く、一度きちんと原因を整理する意義があります。
便の性状も手がかりになります。
- 水様便:感染性腸炎などで多い
- 粘血便(粘液+血):炎症性腸疾患・一部の感染性腸炎などで見られることがある
- 脂肪便(脂っぽく便器に浮く・においが強い):吸収不良の可能性
3. パターン別に考えられる病気
急に始まった水様の下痢
- 感染性腸炎:ウイルス(ノロ・ロタなど)や細菌による腸炎。嘔吐・発熱・腹痛をともなうことがあり、多くは数日で軽快します。血便・高熱をともなうときは評価を急ぐ目安になります
腹痛をともない、排便で楽になる下痢を繰り返す
- 過敏性腸症候群(IBS・下痢型):腹痛とともに下痢を繰り返し、排便すると痛みが和らぐことが特徴とされます。ストレスや緊張で悪化することがあり、血便・体重減少・夜間の症状といった警告サインがないことが前提になります
血便・粘血便や体重減少をともなう慢性の下痢
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病):粘血便、腹痛、体重減少、関節痛・皮膚症状などをともなうことがあります。慢性に経過し、消化器内科での評価(内視鏡など)が中心になります
脂っぽい便・体重が減る慢性の下痢
- 吸収不良:栄養がうまく吸収されず、脂肪便や体重減少をともなうことがあります
動悸・体重減少・暑がりをともなう下痢
- 甲状腺機能の亢進(バセドウ病など):腸の動きが活発になり下痢傾向になることがあります。動悸・発汗・体重減少をともなうときは内科で全身の評価を相談する目安になります
4. 受診先の振り分け早見表
下痢は「内科」「消化器内科」が中心になります。随伴症状や続く期間で振り分けます。
| こんな下痢 | まず相談しやすい科 |
|---|---|
| 急な水様便・発熱・嘔吐(数日以内) | 内科 |
| 血便・粘血便をともなう | 内科または消化器内科(早めに) |
| 腹痛+下痢を繰り返し、排便で楽になる | 内科または消化器内科 |
| 4週間以上続く慢性の下痢 | 消化器内科 |
| 体重減少・夜間の下痢をともなう | 消化器内科(精査の検討) |
| 脂っぽい便・体重減少 | 消化器内科 |
| 動悸・暑がり・体重減少をともなう | 内科(甲状腺などの評価) |
| 38℃以上の高熱・強い脱水・水分がとれない | 救急または当日受診 |
内科 vs 消化器内科の境界
- 内科:急な感染性腸炎、軽い下痢、全身の病気(甲状腺など)が背景にあるかどうかの評価まで幅広く対応します。まずどこか分からないときの入り口にもなります
- 消化器内科:4週間以上続く下痢、血便・粘血便、体重減少をともなう下痢など、腸そのものの病気が疑われ、内視鏡などの検査が検討される場合に相談しやすい科です
「軽い下痢は内科・しつこい下痢は消化器」と単純に分かれるわけではありませんが、続く期間(急性か慢性か)・血便や体重減少などの警告サインの有無で考えると、相談先を絞り込みやすくなります。
5. 自分でできる対処と、やってはいけないこと
やってよいこと
- こまめな水分・電解質の補給:少量ずつ何回にも分けてとると、脱水を防ぎやすくなります(経口補水液などが利用しやすいとされています)
- 消化のよいものから少しずつ食事を再開する
- 下痢の始まった時期・便の回数・性状(水様か血が混じるか)・発熱や腹痛の有無をメモしておく(受診時に役立ちます)
- 食べたもの・渡航歴・周囲に同じ症状の人がいないかを思い出しておく
慎重にしたいこと
- 市販の下痢止め(止瀉薬)を自己判断で使い続ける:感染性腸炎では、原因によっては症状を長引かせる方向に働くことがあるとされ、血便や高熱があるときは特に慎重さが必要です。続く下痢や血便があるときは、まず医療機関で相談するのが安全です
やってはいけないこと(レッドフラグ時)
- 血便や高熱をともなう下痢を「ただの食あたり」として様子を見る
- 水分がとれないほどの嘔吐・腹痛、強い脱水のサインを放置する
- 抗菌薬使用中・使用後の下痢を自己判断で放置する
下痢は「我慢して乗り切る」ことが多い症状ですが、血便・高熱・強い脱水をともなうときや、長く続くときは、一度原因をはっきりさせることが大切です。
6. 受診前のチェックポイント
診察がスムーズになるよう、以下を整理して伝えられると役立ちます。
- いつから・どのくらいの頻度で下痢をしているか
- 便の性状(水様/粘液が混じる/血が混じる/脂っぽい)
- 血便の有無
- 発熱・腹痛・嘔吐の有無と程度
- 排便すると腹痛が和らぐかどうか
- 体重減少・夜間の下痢の有無
- 食べたもの・海外渡航歴・周囲の同様症状
- 既往歴(炎症性腸疾患・甲状腺の病気・糖尿病など)と服用中の薬(抗菌薬の使用歴を含む)
7. よくある質問
Q1. 下痢は何日続いたら受診したほうがよいですか?
A. 目安として、水様便が続いて水分がとれない・強い脱水のサインがある・血便や高熱をともなうときは、日数にかかわらず早めの受診が検討されます。レッドフラグがない軽い下痢でも、2週間以上続くときや、繰り返す・だんだん強くなるときは、一度内科や消化器内科で相談するとよいとされています。
Q2. ストレスで下痢になります。病気ではないのでしょうか?
A. 腹痛とともに下痢を繰り返し、排便すると楽になるパターンは、過敏性腸症候群(IBS)でみられることが知られています。ただし、血便・体重減少・夜間の下痢・発熱といったサインがあるときは、ほかの腸の病気との区別が必要になるため、自己判断せず医療機関で相談することがすすめられます。
Q3. 市販の下痢止めを飲んでもよいですか?
A. 原因によっては慎重さが必要です。感染性腸炎が疑われる場面や、血便・高熱があるときは、下痢止めの自己判断使用が症状を長引かせる方向に働くことがあるとされています。続く下痢や血便があるときは、まず医療機関で相談するのが安全です。
Q4. 便に血が混じっていました。何科に行けばよいですか?
A. 下痢に血が混じるときは、感染性腸炎や炎症性腸疾患などの可能性があり、内科または消化器内科で早めに相談する目安になります。大量の出血・タール状の黒い便・めまいや冷汗をともなうときは、当サイトの結果にかかわらず救急受診を検討してください。なお、下痢ではなく排便時に肛門から鮮やかな血が出る場合は、痔など別の原因のこともあります。
Q5. 下痢と便秘を繰り返します。どう考えればよいですか?
A. 下痢と便秘が交互に現れるパターンは、過敏性腸症候群(混合型)などでみられることがあります。一方で、便通の変化に血便・体重減少・貧血などをともなうときは、腸の病気の評価が必要になることもあります。続く便通異常は、消化器内科で一度相談するとよいとされています。便秘側が強いときは関連ページの便秘の解説も参考にしてください。
8. 関連ページ
このサイトの内容は、診療ガイドラインや教科書から得られる一般的な情報をまとめたものです。実際の診療では症状が似ていても診断は人によって異なり、同じ病気でも経過や対応は一人ひとり違います。気になる症状があるときは、必ず医療機関で医師の診察を受けてください。
監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)
参考にした主な情報源
この記事は、各学会の診療ガイドライン・厚生労働省の公開情報・Minds ガイドラインライブラリ・標準的な医学教科書をもとに、医師監修のうえ作成しています。