においがわからない(嗅覚障害)は耳鼻科と内科どちらへ?
監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)なぜ精神科・心療内科の医師が全科を監修しているの?
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「最近においがしない」「食べ物の風味が感じにくくなった」——嗅覚の問題はQOLを大きく低下させます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症として注目されたこともあり、受診先に迷う方も多いでしょう。嗅覚障害の原因は多岐にわたり、原因によって適切な受診科が異なります。
結論:まずどっち?
| こんなとき | おすすめの初診科 |
|---|---|
| 風邪・コロナ後ににおいがしなくなった | 耳鼻咽喉科 |
| 鼻づまり・アレルギー性鼻炎がある | 耳鼻咽喉科 |
| 頭部外傷後からにおいがしない | 耳鼻咽喉科 or 脳神経外科 |
| 花粉症の季節ににおいが落ちる | 耳鼻咽喉科 |
| コロナ後遺症として嗅覚が続いている(3か月以上) | 耳鼻咽喉科(コロナ後遺症外来も可) |
| においと味が同時にしなくなった | 耳鼻咽喉科 |
| 慢性的に鼻水・鼻詰まりがある | 耳鼻咽喉科 |
| 糖尿病・甲状腺疾患などの持病があり嗅覚低下が起きた | 内科→必要なら耳鼻咽喉科へ紹介 |
基本的には耳鼻咽喉科が第一選択です。
嗅覚障害の主な原因と受診科
鼻・副鼻腔が原因(最多)→ 耳鼻咽喉科
嗅覚障害のうち最も頻度が高いのは、鼻腔や副鼻腔の炎症・閉塞によるものです。においを感じる嗅上皮(鼻の奥にある嗅覚受容体の部位)まで、においの分子が届かなくなることが原因です(気導性嗅覚障害)。
代表的な原因:
- 急性鼻炎(風邪): 風邪の治癒に伴い改善することが多い。ただし長引く場合は受診が望ましい
- アレルギー性鼻炎: 花粉症などで鼻粘膜が腫れると嗅覚が低下する。抗アレルギー薬で改善することも多い
- 慢性副鼻腔炎(蓄膿症): 鼻茸(鼻ポリープ)を伴う場合は嗅覚障害が顕著。薬物療法や手術が必要なことも
- 好酸球性副鼻腔炎: 再発しやすい難治性の副鼻腔炎。嗅覚低下が初発症状になることが多い
ウイルス感染後(コロナ・インフルエンザ等)→ 耳鼻咽喉科
新型コロナウイルス感染症では、嗅覚・味覚障害が高頻度で報告されました。**感染性嗅覚障害(嗅神経障害型)**と呼ばれ、ウイルスが嗅神経・嗅上皮を直接障害することが原因と考えられています。
- 多くは数週間〜数か月で改善する可能性があります
- 3か月以上改善しない場合は「コロナ後遺症」として耳鼻咽喉科での専門的な評価が有効です
- **嗅覚トレーニング(嗅覚リハビリ)**が有効とする報告もあります(レモン・ユーカリ・バラ・クローブなどを1日2回嗅ぐ訓練)
インフルエンザ後やその他のウイルス性上気道炎後にも同様の嗅覚障害が起こることがあります。
頭部外傷後 → 耳鼻咽喉科 or 脳神経外科
交通事故・転倒などによる頭部打撲後に嗅覚を失った場合(外傷性嗅覚障害)、嗅神経が篩板(頭蓋底にある骨の穴)を通る部分で断裂している可能性があります。
- 頭部外傷後の嗅覚障害は回復しにくいことが多い
- MRIによる画像評価が必要なため、耳鼻咽喉科とともに脳神経外科や神経内科も関与することがあります
神経変性疾患の初期症状 → 内科(神経内科)or 耳鼻咽喉科
嗅覚障害は、パーキンソン病やレビー小体型認知症の初期症状として現れることが知られています。特に:
- 60歳以上で体の動きの遅さ・震えを伴う
- 認知機能の低下を感じている
- においの低下が徐々に進行した
このような場合は神経内科(内科)の受診も検討されます。ただし、まず耳鼻咽喉科で鼻・副鼻腔に明らかな原因がないことを確認してから紹介を受けるパターンが一般的です。
内分泌・代謝疾患 → 内科
甲状腺機能低下症・糖尿病・亜鉛欠乏症などで嗅覚が低下することがあります。これらの持病がある方や、全身症状(体のだるさ・冷え・むくみなど)を伴う場合は、まず内科でのチェックが適切です。
薬剤性 → 処方してもらっている科(内科など)
一部の薬剤(一部の抗菌薬・降圧薬・抗甲状腺薬など)の副作用として嗅覚変化が生じることがあります。服薬中の薬が影響している可能性を考え、処方科に相談してみましょう。
耳鼻咽喉科での嗅覚検査
嗅覚障害を評価するために、耳鼻咽喉科では以下の検査が行われることがあります:
- 嗅覚テスト(基準嗅力検査・T&Tオルファクトメーター): 5種類のにおいを薄い濃度から嗅ぎ、検出できる閾値を測定
- 副鼻腔CT・MRI: 副鼻腔炎・鼻茸・腫瘍の評価
- 鼻腔内視鏡: 鼻腔の直接観察
- 血液検査: 亜鉛欠乏・炎症反応の評価
嗅覚障害と「混同しやすい味覚障害」
「においがしない」と「味がしない」は密接に関係しています。食べ物の「風味」の約80%は嗅覚に依存しているため、嗅覚が落ちると味もおかしく感じます。純粋な味覚(甘味・塩味・苦味・酸味・うま味)は舌の味蕾が担うため、嗅覚障害だけの場合でも「味がわからない」と表現されることがあります。
純粋な味覚障害(甘い・しょっぱいなど基本的な味が全くわからない)の場合は、亜鉛欠乏・薬剤性が多く、内科的評価も重要です。
よくある質問
Q. コロナ後遺症の嗅覚障害が半年以上続いています。どこに行けばよいですか?
A. 耳鼻咽喉科への受診が推奨されます。コロナ後遺症外来(複数の診療科が連携する外来)が設置されている医療機関もあります。嗅覚トレーニング(嗅覚リハビリ)は一定の効果が報告されており、実施方法を指導してもらうことができます。また、副鼻腔炎など追加の原因がないかを評価してもらうことも大切です。
Q. 花粉症の季節になるとにおいが薄くなります。受診が必要ですか?
A. アレルギー性鼻炎による鼻粘膜の腫れが嗅覚を低下させている可能性があります。抗ヒスタミン薬・点鼻ステロイドなどのアレルギー治療で改善することが多いため、耳鼻咽喉科で相談するとよいでしょう。花粉シーズン以外にもにおいの低下が続く場合は、他の原因(副鼻腔炎・好酸球性副鼻腔炎など)も検討されます。
Q. においがしないのに鼻詰まりは全くありません。なぜですか?
A. においは鼻腔の最上部にある嗅上皮で感知されます。鼻全体が詰まっていなくても、嗅上皮に炎症が起きたり(嗅神経の障害)、においの分子が嗅上皮まで届かない微細な障害があると嗅覚が低下します。鼻詰まりがなくても嗅覚低下は起こり得るため、症状があれば耳鼻咽喉科への受診が適切です。
Q. においに「変なにおいがする」という症状も嗅覚障害ですか?
A. はい、においが「ゴミのようなにおい」「焦げるようなにおい」「薬品のようなにおい」として変わって感じられる場合を**異嗅症(嗅覚錯誤)**といいます。ウイルス感染後や神経の回復過程で起こることがあります。悪化傾向がなく軽度であれば経過観察のこともありますが、耳鼻咽喉科で評価を受けることが望ましいです。
まとめ
嗅覚障害(においがわからない)の受診先は、ほとんどのケースで耳鼻咽喉科が第一選択です。副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・ウイルス感染後(コロナ後遺症含む)が最多の原因であり、いずれも耳鼻咽喉科で評価・治療を行います。糖尿病・甲状腺疾患などの持病がある場合や、パーキンソン病の初期症状が疑われる場合は、内科(神経内科)への相談も並行して行うとよいでしょう。3か月以上改善しない嗅覚障害は、早めに専門科を受診することをおすすめします。
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監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科) このページの内容は診療ガイドラインや標準的な医学教科書をもとにまとめた一般情報です。個人の診断・治療方針については必ず医療機関でご相談ください。
参考にした主な情報源
この記事は、各学会の診療ガイドライン・厚生労働省の公開情報・Minds ガイドラインライブラリ・標準的な医学教科書をもとに、医師監修のうえ作成しています。