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胸痛があるとき——「絞めつけられる」「刺すような」で考える受診先

監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)
なぜ精神科・心療内科の医師が全科を監修しているの?

監修医の専門は精神科・心療内科ですが、当サイトは内科・整形外科・耳鼻咽喉科・眼科・皮膚科・小児科・泌尿器科など12診療科を扱います。専門外の領域は各学会の最新ガイドラインに準拠して作成し、判断に迷う記述は記事を保留・修正しています。くわしくは監修方針をご覧ください。

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胸の痛みは、軽い肋間神経痛のような筋骨格の痛みから、命に関わる急性冠症候群(心筋梗塞・不安定狭心症)まで原因の幅が非常に広い症状です。「胸が痛い=心臓」と思い込んで様子を見てしまうケースもあれば、逆に「ただの筋肉痛」と思って受診が遅れ、後から急性心筋梗塞だったと分かるケースもあります。

胸痛で最も重要なのは、「すぐに119を呼ぶべき胸痛」と「落ち着いて受診すればよい胸痛」を見分けることです。とくに「20分以上続く」「冷や汗・吐き気をともなう」「安静にしていても出る」場合は、迷わず救急受診を考えてください。

まず最初に確認:すぐに119を呼ぶべき胸痛

以下のいずれかに当てはまる胸痛は、急性冠症候群(心筋梗塞・不安定狭心症)・大動脈解離・肺塞栓・気胸などの重大な病気の可能性があります。当サイトの結果にかかわらず、ためらわず119/救急外来を選んでください。

🚨 即119の胸痛サイン

なぜここまで強調するか

急性冠症候群(ACS)は発症から治療開始までの時間が短いほど救命率が高く、心筋障害も小さくて済みます。「様子を見て翌朝かかりつけに行こう」では手遅れになる病気で、迷ったら救急が原則です。「119を呼んで結果的に違った」より「呼ばずに手遅れになる」方が圧倒的に怖いと考えてください。

落ち着いて受診すればよい胸痛の特徴

一方で、以下のような胸痛は緊急性が低めで、平日の外来受診で十分対応できることが多いタイプです。

ただし、これらの「軽そうな胸痛」と思っていたら実は狭心症や心筋梗塞だった、というケースも一定数あります。繰り返す胸痛・徐々に増悪する胸痛は、軽く見えても一度は医療機関で評価を受けてください。

性質別の主な原因

胸痛は「どんな痛み方か」で原因がある程度推測できます。

絞めつけ感・圧迫感(胸の中央〜左)

胸の真ん中〜左側を「ぎゅっと締めつけられる」「重いものを乗せられたような」と感じるタイプ。心臓由来の可能性を強く考えます。

鋭い・刺すような痛み(片側性が多い)

ピリッと走るような痛み、刺すような痛み。多くは筋骨格や神経由来で緊急性は低めですが、気胸や肺塞栓のように緊急性の高い病気でもこの性状をとることがあります。

灼熱感・酸の逆流感(みぞおち〜胸の下)

「焼けるような」「酸っぱいものが上がってくる」感覚。多くは消化器由来です。

動悸・呼吸困難・死の恐怖をともなう短時間の痛み

ただし、初めての発作では心筋梗塞・不整脈・甲状腺機能亢進症・気管支喘息などの身体疾患をまず除外する必要があります。

労作性 vs 安静時——いつ痛むかは超重要な情報

胸痛で**「いつ痛むか」は原因を絞り込む最大のヒント**です。

出現タイミング考えられる主な原因
階段・坂道・運動中に出て止まると数分で軽快労作性狭心症(循環器内科で精査を)
安静時・夜間・横になっているときに持続急性冠症候群・大動脈解離・心膜炎(緊急性高)
食後・横になったときに灼熱感胃食道逆流症
深呼吸・体をひねると増悪肋間神経痛・筋骨格性・胸膜炎
不安場面・人混み・電車内で発作的にパニック発作(ただし初回は身体疾患除外)
同じ姿勢を長時間とった後(飛行機・術後)肺塞栓(緊急)

特に「労作で出て安静で治まる」というパターンは典型的な労作性狭心症で、放置すると急性心筋梗塞に進展する危険があります。労作で胸痛が出る人は、症状が落ち着いていても循環器内科を早めに受診してください。

受診の目安となる科

こんな胸痛まず相談しやすい科
労作で出る絞めつけ感(数分で軽快)循環器内科
安静時の絞めつけ感が20分以上(冷汗・嘔気あり)119/救急
動悸とともに繰り返す胸痛内科・循環器内科
食後・横になると胸やけ内科(消化器内科)
体動・呼吸で増悪する筋肉痛様内科・整形外科
押すと痛い場所がはっきりした片側痛内科・整形外科
突然の片側胸痛+呼吸困難119/救急
動悸・息苦しさ・死の恐怖が短時間で出る(繰り返す)内科で身体疾患除外→精神科・心療内科
数日前から続く片側の刺す痛みで、皮膚にピリピリ感内科・皮膚科(帯状疱疹の可能性)

内科(循環器)と心療内科の使い分け

胸痛で内科(循環器)に行くべきか、心療内科に行くべきか迷う方は多いです。原則は次の通りです。

まず内科(循環器)で身体疾患の除外を

胸痛の原因が身体疾患(狭心症・不整脈・GERD等)か、ストレス由来(パニック発作等)かを症状だけで見分けるのは医師でも難しいことがあります。心筋梗塞をパニック発作と誤認して救急受診が遅れる例も、逆にパニック発作のたびに救急車を呼んでしまう例も、どちらも一定数あります。

そのため、初回の胸痛・繰り返す胸痛では、まず内科(循環器内科)で心電図・採血・必要に応じて心エコー・ホルター心電図・運動負荷心電図などで身体疾患を除外するのが原則です。

身体疾患が否定された後、不安・パニック傾向が前面なら心療内科・精神科

心電図・採血等で身体疾患が除外されたうえで、不安発作の特徴(10分以内にピーク・30分以内に軽快・予期不安・回避行動など)が明らかであれば、心療内科や精神科での評価・治療が役立つことがあります。「精神科は重症の人が行く所」というイメージを持つ方もいますが、実際にはパニック症・全般性不安症は外来で十分対応できる病気で、早めの相談が回復を早めます。

なお、精神科と心療内科は実際にはかなり重なっており、迷ったら通いやすい方で構いません。詳しい治療内容(薬の選び方・認知行動療法など)については、長友院長の医療ブログでも解説しています。

受診前のチェックポイント

医療機関を受診する前に、以下を整理しておくと診察がスムーズです。

痛みについて

きっかけ・状況

一緒に出ている症状

既往・リスク

これらを紙やスマホメモにまとめて持参すると、診察時間が短くても要点が伝わります。

自分でできること

胸痛そのものを自己判断で「様子見」するのは推奨できませんが、生活面で改善できることはあります。

繰り返す胸痛は「我慢して様子を見る」よりも、一度しっかり医療機関で評価を受けた方が結果的に安心できます。

よくある質問

Q. 胸の痛みは何分続いたら危険ですか?

A. 20分以上続く強い胸痛、特に安静時に出るものは急性冠症候群を疑う目安です。20分はあくまで一つの目安で、5〜10分でも冷や汗・嘔気・放散痛をともなうなら救急受診を考えてください。逆に数秒〜数十秒でピリッと走る痛みは筋骨格や神経由来であることが多く、緊急性は低めです。判断に迷うなら#7119(救急安心センター)で相談する方法もあります。

Q. 動悸と胸痛の違いは何ですか?

A. 動悸は「心臓の拍動を自覚する」感覚(ドキドキ・脈が飛ぶ・速い)で、胸痛は「痛み」そのものです。両方が同時に出ることもあり、不整脈(心房細動・期外収縮)・パニック発作・甲状腺機能亢進症などでよくみられます。動悸単独でも失神・胸痛・呼吸困難をともなう場合は循環器内科で心電図・ホルター心電図を受けてください。動悸の詳細は別ページで解説しています。

Q. 逆流性食道炎の胸痛と心筋梗塞の胸痛を見分けられますか?

A. 残念ながら症状だけで完全に見分けるのは医師でも難しいことがあります。一般的には逆流性食道炎は食後・横になったときの灼熱感で前屈で増悪、心筋梗塞は労作時または安静時の絞めつけ感で冷汗・嘔気をともなう、という違いがあります。ただし高齢者・糖尿病の方は心筋梗塞でも非典型的な「胸やけのような違和感」だけで発症することもあり、初回の胸痛は心電図でまず心臓を確認するのが安全です。

Q. 若くても心筋梗塞は起こりますか?

A. 起こります。30代・40代でも急性心筋梗塞は珍しくなく、特に喫煙・家族性高コレステロール血症・糖尿病・コカイン使用などのリスク因子がある場合は若年でも発症します。また、若年女性に多い「冠攣縮性狭心症(早朝・安静時に発作が出る)」もあります。「若いから心臓は大丈夫」と決めつけず、症状が当てはまるなら年齢を問わず受診してください。

Q. パニック発作と心筋梗塞はどう見分けたらいいですか?

A. パニック発作は10分以内にピークに達し30分以内に軽快する短時間の発作で、過去にも同様の発作を繰り返している・特定の状況で出やすい、という特徴があります。心筋梗塞は持続的で安静でも治まらず、冷や汗・嘔気・放散痛をともないます。ただし初回の発作では見分けが難しく、心電図・採血で身体疾患を除外することが必須です。「以前パニック発作と診断されたから今回も同じだろう」と自己判断せず、いつもと違う痛み方なら救急受診を検討してください。詳しい治療(薬・認知行動療法など)は長友院長の医療ブログで解説しています。

関連ページ

精神科領域(パニック症・全般性不安症など)の詳しい治療情報は、長友院長の医療ブログ もご参照ください。

監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)

参考にした主な情報源

この記事は、各学会の診療ガイドライン・厚生労働省の公開情報・Minds ガイドラインライブラリ・標準的な医学教科書をもとに、医師監修のうえ作成しています。

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