発熱があるとき——救急かどうか・何科に行くかを症状の組み合わせで考える
監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)なぜ精神科・心療内科の医師が全科を監修しているの?
監修医の専門は精神科・心療内科ですが、当サイトは内科・整形外科・耳鼻咽喉科・眼科・皮膚科・小児科・泌尿器科など12診療科を扱います。専門外の領域は各学会の最新ガイドラインに準拠して作成し、判断に迷う記述は記事を保留・修正しています。くわしくは監修方針をご覧ください。
⚠️ このサイトは診断を行うものではありません。受診先を考えるための参考情報です。
発熱は体が感染や炎症と戦っているサインで、多くは数日で軽快します。一方で、強い随伴症状をともなう・長引く・特定の集団(妊婦・高齢者・乳児・免疫を抑える薬を飲んでいる方)では、放置できない病気が背景に隠れていることがあります。このページでは、**「救急に行くべきか/翌日まで様子をみてよいか/自宅療養で大丈夫か」**の振り分けと、随伴症状ごとの受診科を整理します。
すぐに救急受診を考えるサイン
次のいずれかに当てはまる場合は、当サイトの結果に関係なく、119/救急外来を検討してください。
- 意識がもうろうとする・呼びかけへの反応が鈍い
- 強い頭痛と首の硬直(うなじが曲げにくい)
- 呼吸が苦しい・息切れで会話が途切れる・SpO2の低下
- 血圧の低下・冷や汗・顔色が真っ白
- 唇や指先が紫色(チアノーゼ)
- けいれんが起きた・けいれんが5分以上続く
- 免疫を抑える薬(抗がん剤・ステロイド大量・生物学的製剤など)を使用中の発熱
- 妊婦の発熱
- 3ヶ月未満の乳児で38℃以上の発熱
- 高齢者で全身状態が悪い・水分が摂れない
- 海外渡航直後の高熱(マラリア・デング熱などの可能性)
救急 vs 翌日まで様子 vs 自宅療養——振り分けの考え方
発熱単独で「何度以上が危ない」と一律には決められません。全身状態と随伴症状で判断します。
🚨 すぐ救急(夜間・休日でも)
- 上記「すぐに救急受診を考えるサイン」のいずれかに該当
- 38℃以上+強い側腹部痛・腰背部痛(腎盂腎炎の可能性)
- 38℃以上+胸痛・呼吸困難
- 持続する激しい腹痛+発熱
⏰ 翌日(または当日早めに)受診
- 38℃以上が3日以上続いている
- 解熱しても全身状態が戻らない
- 排尿時痛・頻尿をともなう発熱
- 強い咽頭痛で水分が摂りにくい
- 黄色〜緑色の濃い痰が続いている
- 持病(糖尿病・心疾患・呼吸器疾患・腎疾患)があり発熱が続いている
- 高齢者の微熱でも、食欲・活気が落ちている
🏠 自宅で様子をみてよい目安
- 38℃前後・全身状態は保たれている
- 水分・食事が取れている
- 鼻汁・軽い咳・のどの違和感など、いわゆる「かぜ症状」が中心
- 発熱以外に強い随伴症状がない
ただし、自宅療養中でも上記「救急サイン」が出たら方針を切り替えてください。
随伴症状で受診先を考える
発熱の原因は感染部位や臓器によって大きく分かれます。いっしょに出ている症状が受診科の最大のヒントになります。
| 随伴症状 | 想定されることのある状態 | 相談しやすい科 |
|---|---|---|
| 強い咽頭痛・扁桃の腫れ | 急性扁桃炎・溶連菌・伝染性単核球症 | 耳鼻咽喉科・内科 |
| 鼻汁・顔面圧痛・後鼻漏 | 副鼻腔炎・感冒 | 耳鼻咽喉科・内科 |
| 咳・痰・呼吸困難 | 気管支炎・肺炎・COVID-19 | 内科(呼吸器) |
| 腹痛・下痢・嘔吐 | 急性胃腸炎・虫垂炎・胆嚢炎 | 内科(消化器)/必要時 外科 |
| 排尿時痛・頻尿・残尿感 | 膀胱炎 | 内科・泌尿器科 |
| 腰背部痛+発熱 | 腎盂腎炎 | 内科・泌尿器科 |
| 関節痛・朝のこわばり・皮疹 | ウイルス感染・膠原病(リウマチ等) | 内科(リウマチ・膠原病) |
| 強い頭痛・項部硬直・嘔吐 | 髄膜炎 | 救急 |
| 耳痛(特に小児) | 中耳炎 | 耳鼻咽喉科・小児科 |
| 子どもの発熱全般 | 多種 | 小児科 |
| 妊婦の発熱 | 妊娠経過への影響評価 | 産婦人科 |
| 渡航後の高熱 | 輸入感染症(マラリア等) | 内科(感染症)/救急 |
科の境界に迷うときは、まず内科でからだ全体を診てもらい、必要に応じて専門科に紹介してもらう流れが現実的です。
解熱剤を使うべきか
解熱剤の目的は「熱を下げて病気を治す」ことではなく、つらさを和らげて休息・水分摂取をしやすくすることです。熱そのものが感染症の経過を悪化させるわけではないため、本人がつらくなければ無理に下げる必要はありません。
使うかどうかの一般的な目安
- 38.5℃前後を目安に、本人がつらいときに使う
- 解熱しても根本治療にはならない(原因が続いていれば再び上がる)
- 連用は避け、間隔を空けて使う
- 食欲低下・脱水傾向があるときは無理に下げず医療機関に相談
成人と小児で注意点が違う
- 成人:アセトアミノフェン(カロナール等)が比較的選択しやすい。NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン)は胃腸障害・腎機能・喘息発作・抗血栓薬との相互作用に注意
- 小児:自己判断でアスピリン・ロキソプロフェンを与えるのは避ける(ライ症候群等の懸念)。アセトアミノフェンを年齢・体重に応じて使うのが一般的
- 妊娠中:自己判断せず医師・薬剤師に相談(アセトアミノフェンが選ばれることが多い)
具体的な商品名・用量は、薬機法の関係でこのページでは扱いません。持病・年齢・他の薬との飲み合わせによって適切な薬が変わるため、薬局・医療機関で相談してください。
受診前のチェックポイント
医療機関に行く前に整理しておくと、診察が短時間で進みやすくなります。
- 発熱パターン:いつから/最高何度/日内変動(朝低く夕方高い等)/解熱剤の効き
- 随伴症状:のど・鼻・咳・腹部・排尿・関節・皮疹・頭痛など、出ているものを全部
- 海外渡航歴:直近2ヶ月以内の海外滞在地と日程
- 動物接触:ペット・野生動物・畜産動物との接触
- 職場・家庭の感染状況:周囲に同じ症状の人がいるか・保育園や学校での流行
- 持病と内服薬:糖尿病・心疾患・腎疾患などの既往/免疫抑制薬・抗がん剤・ステロイドの使用
- ワクチン歴:インフルエンザ・COVID-19・肺炎球菌など、直近の接種状況
- 女性の場合:妊娠の可能性・最終月経
自分でできること
- 水分補給を十分に(経口補水液・スポーツドリンク等)
- 部屋を涼しく保ち、横になって休む
- 食事は無理せず、消化のよいものを少量ずつ
- 解熱剤は必要なときに(連用しない)
- 同居家族へのうつりを減らす(マスク・手洗い・タオル分け)
よくある質問
Q. 高齢者は微熱でも要注意と聞きました。なぜですか?
A. 高齢者は感染しても発熱反応が鈍く、重症化していても37℃台にとどまることがあります。逆に「いつもより活気がない」「食欲が落ちた」「ぼんやりしている」といった全身状態の変化が、肺炎や尿路感染症の唯一のサインということもあります。微熱であっても普段との違いを重視してください。
Q. 「不明熱」とは何ですか?
A. 一般的には、38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、適切な検査をしても原因が特定できない状態を不明熱と呼びます。感染症だけでなく、膠原病・悪性腫瘍・薬剤性などさまざまな原因がありえます。長く続く発熱は、内科(総合内科・感染症内科)での精査が必要になることがあります。
Q. コロナ・インフルエンザ・溶連菌は症状で見分けられますか?
A. 症状の重なりが大きく、症状だけで確実に見分けるのは難しいとされています。咽頭痛と扁桃の白苔が目立つときは溶連菌が念頭に置かれることがあり、急な高熱・関節痛・倦怠感が前面に出るときはインフルエンザらしさが指摘されることもありますが、最終的には抗原検査・PCR検査で確認することが多くなります。
Q. 夏でも肺炎は起こりますか?
A. 起こります。夏でも高齢者・基礎疾患のある方は誤嚥性肺炎を起こすことがあり、若い人でもエアコンの加湿器・冷却塔由来のレジオネラ肺炎などが報告されています。「夏だから肺炎ではない」とは言えないため、発熱+咳・痰・呼吸困難が続くときは内科で評価を受けてください。
Q. 予防接種のあとに熱が出ました。受診すべきですか?
A. インフルエンザ・COVID-19・小児ワクチンなど、多くの予防接種で接種後24〜48時間以内に37〜38℃台の発熱が起こりえます。通常は1〜2日で自然に下がります。一方で、接種から3日以上たって出る高熱や、強い随伴症状をともなう発熱は予防接種と無関係の感染症の可能性があり、医療機関の受診をおすすめします。
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監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)
参考にした主な情報源
この記事は、各学会の診療ガイドライン・厚生労働省の公開情報・Minds ガイドラインライブラリ・標準的な医学教科書をもとに、医師監修のうえ作成しています。