眠れない——精神科・心療内科か内科か、不眠の受診先で迷ったときの判断ポイント
監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)なぜ精神科・心療内科の医師が全科を監修しているの?
監修医の専門は精神科・心療内科ですが、当サイトは内科・整形外科・耳鼻咽喉科・眼科・皮膚科・小児科・泌尿器科など12診療科を扱います。専門外の領域は各学会の最新ガイドラインに準拠して作成し、判断に迷う記述は記事を保留・修正しています。くわしくは監修方針をご覧ください。
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「毎晩なかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚める」——慢性的な不眠は日本人の成人の約20%が経験するとされています。受診先として「内科でいいのか、精神科・心療内科に行くべきか」で迷う方が多いため、ここで整理します。
結論:まずどっち?
| 不眠の背景 | 受診先の目安 |
|---|---|
| 不眠のみ、他に気になる症状がない | 内科でも対応可能 |
| 不眠+気分の落ち込み・意欲の低下 | 精神科・心療内科 |
| 不眠+強い不安・パニック感 | 精神科・心療内科 |
| 不眠+いびき・日中の強い眠気 | 内科(睡眠時無呼吸症候群の評価) |
| 不眠+頻尿・頭痛・関節痛など身体症状 | 内科(原因疾患の精査) |
| 職場・家庭のストレスで眠れない | 心療内科 |
迷ったときは、まずかかりつけ内科に相談するのが一つの方法です。精神科的な問題が疑われる場合はそこから紹介してもらえます。
内科で診てもらえる不眠
内科(一般内科・かかりつけ医)でも、次のような不眠に対応できます。
- 不眠単独で、うつ症状や強い不安をともなわない
- 身体疾患(甲状腺機能亢進症・慢性疼痛・咳・頻尿など)が原因で眠れない
- 睡眠時無呼吸症候群の可能性がある(いびき・日中の眠気)
- 生活習慣の乱れ(カフェイン・スマホ・夜間の光など)による不眠
内科でも睡眠薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系・メラトニン受容体作動薬など)を処方することができます。ただし、身体疾患の治療が中心であり、心理的・精神的な問題の深掘りは限定的になります。
精神科・心療内科が適している不眠
次のような場合は、精神科・心療内科への受診が推奨されます。
- 不眠に加えて、気分の落ち込み・何もやる気がしない・死にたい気持ちが続く
- 不眠に加えて、強い不安・動悸・恐怖感・パニック症状がある
- 不眠に加えて、幻聴・妄想・強迫的な考えがある
- 不眠に加えて、拒食・過食など食行動の問題がある
- 職場・家庭・対人関係のストレスが明らかで、それが直接の原因と思われる
- 薬物療法に加えて、認知行動療法(CBT-I)など心理的アプローチを希望する
不眠はしばしばうつ病・不安症・双極性障害などの最初のサインとして現れます。こころの健康に関連する不眠は、精神科・心療内科で根本的な原因を含めて評価・治療することが、長期的には有効であると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合
いびきが激しい・昼間に突然眠くなる・起床時に頭痛がするなどの場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。この場合は精神科より**内科(睡眠外来・呼吸器内科)**での評価(睡眠ポリソムノグラフィー)が先に必要です。SASが原因の不眠は、CPAPなどの治療で改善する可能性があります。
「慢性不眠症」の定義と受診の目安
週3回以上、3か月以上続く不眠は「慢性不眠症」の目安の一つとされています。
- 寝つきに30分以上かかることが多い
- 夜中に何度も目が覚めて、再入眠に時間がかかる
- 朝早く目が覚めて、眠れない
- 目が覚める時刻が早く、十分な睡眠時間が取れない
こうした状態が週3回以上・3か月以上続く場合は、生活習慣の見直しだけでなく医療的な評価が勧められます。
受診時に伝えると役立つこと
- 不眠はいつから始まったか
- どんな状態か(寝つきが悪い・中途覚醒・早朝覚醒)
- 一日の睡眠時間の目安
- 日中の眠気や集中力低下はあるか
- 気分・意欲・不安感の変化
- 飲んでいる薬・カフェイン摂取・飲酒の状況
🚨 すぐに精神科を受診すべき場合
次のような症状がともなう場合は、早めの精神科受診が推奨されます。
- 「消えてしまいたい」「死にたい」という気持ちがある
- 不眠が続いて仕事や日常生活がほとんど機能しない
- 幻聴(声が聞こえる)や妄想(誰かに追われているなど)がある
- 数日ほとんど眠れない状態が続いている
よくある質問
Q. 内科で「眠れない」と言っても大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。内科でも不眠に対応できます。睡眠薬の処方や、不眠の背景にある身体的な問題の評価が行われます。受診の際、気分の落ち込みや強い不安もあれば、それも一緒に伝えると、精神科・心療内科への紹介を検討してもらいやすくなります。
Q. 精神科に行くのは敷居が高い気がします。
A. 精神科・心療内科は、「こころの症状」を診る専門科で、必ずしも重篤な疾患でなくても受診できます。不眠・不安・気分の落ち込みといった状態を扱う「外来」が中心で、入院が必要な疾患だけを診ているわけではありません。予約のみで受診できるクリニックが多く、受診のハードルは以前より下がっています。
Q. 睡眠薬を飲むと依存しますか?
A. 睡眠薬の種類によって依存性は異なります。従来のベンゾジアゼピン系薬は依存・耐性の問題があることが知られていますが、近年はメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)やオレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント・レンボレキサント)など、依存性が低いとされる薬も使われています。薬の選択や服薬期間については、主治医と相談することが大切です。
Q. 認知行動療法(CBT-I)とは何ですか?
A. 不眠の認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)は、睡眠に関する誤った思い込みや習慣を修正することで不眠を改善する心理療法の一種です。薬物療法と同等以上の効果があるとするデータもあります。精神科・心療内科のクリニックで提供されていることがあり、希望する場合は受診時に確認するとよいでしょう。
まとめ
- 不眠のみ→内科でも対応可
- 不眠+気分の落ち込み・強い不安→精神科・心療内科
- いびき・日中の強い眠気→内科(睡眠時無呼吸症候群の評価を先に)
- 「消えたい」気持ちがともなう→早めに精神科へ
- 週3回・3か月以上続く不眠は慢性不眠症の目安
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監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科) このページの内容は診療ガイドラインや標準的な医学教科書をもとにまとめた一般情報です。 不眠の治療については、かかりつけ医または精神科・心療内科に個別にご相談ください。
参考にした主な情報源
この記事は、各学会の診療ガイドライン・厚生労働省の公開情報・Minds ガイドラインライブラリ・標準的な医学教科書をもとに、医師監修のうえ作成しています。