腰痛・足のしびれで整形外科か内科か迷うとき——見落とせない「危険な腰痛」のサインも解説
監修:長友恭平(精神保健指定医/標榜:精神科・心療内科)⚠️ このサイトは診断を行うものではありません。受診先を考えるための参考情報です。気になる症状があるときは医療機関で医師の診察を受けてください。
結論:腰痛はまず整形外科。ただし「危険なサイン」があれば内科も視野に
日本では腰痛を抱えている方の数が非常に多く、生涯に一度は経験するという方がほとんどです。腰痛の受診先として最初に思い浮かぶのは整形外科ですが、内科的な疾患が腰痛の原因になっていることも少なくありません。
大まかな目安をまとめると次のとおりです。
| 腰痛の特徴 | まず受診すべき科 |
|---|---|
| 動作・姿勢で変化する腰の痛み、足へのしびれ | 整形外科 |
| 発熱を伴う腰痛 | 内科(感染症の精査) |
| 安静にしていても痛い、夜間に特に痛い | 整形外科または内科(悪性疾患の除外) |
| 体重が急激に減っている+腰痛 | 内科(全身疾患の精査) |
| 腰痛+血尿、脇腹の叩くと響く痛み | 泌尿器科または内科 |
| 腰痛+下腹部痛、月経との関連 | 婦人科または内科 |
整形外科が得意な腰痛・しびれ
非特異的腰痛(いわゆる「ぎっくり腰」・慢性腰痛)
腰痛の大部分を占めるのが、椎間板や筋肉・靭帯などの問題による痛みです。「重いものを持ったあとから急に痛くなった」「長時間座っていると腰が張る」「前に曲げると痛む」といった訴えが典型的で、動作や姿勢で変化するのが特徴です。
多くの場合、整形外科でのレントゲン、場合によってはMRI検査で状態を確認してもらい、リハビリや処置を受けることになります。
腰椎椎間板ヘルニア
背骨の椎間板が本来の位置からはみ出て、神経を圧迫することで腰痛と下肢への痛み・しびれが起こることがあります。「お尻から太もも、ふくらはぎにかけてビリビリする」「咳やくしゃみで痛みが増す」という訴えが特徴的です。
これは整形外科での診察・画像検査・治療が中心となります。
腰部脊柱管狭窄症
加齢とともに背骨の通り道が狭くなり、神経が圧迫されることで起こるとされます。「歩いていると足がしびれて歩けなくなる、少し休むと楽になる」という間欠性跛行が特徴です。前に屈んだり座ったりすると楽になることが多いのも目安になります。
こちらも整形外科が専門です。
内科が関与する腰痛
腰痛には「整形外科的ではない原因」があることもあります。整形外科の教科書でも「red flags(危険なサイン)」として特に注意するよう記載されている項目があります。
レッドフラグ(危険な腰痛のサイン)
次の項目があるときは、整形外科だけでなく内科や救急での評価が必要なことがあります:
- 発熱を伴う腰痛:感染性脊椎炎(背骨の感染症)の可能性があります。免疫が下がっている方や、最近処置・注射を受けた後の腰痛は特に注意です。
- 安静にしていても痛い、夜間に痛みで目が覚める:腫瘍や炎症性疾患の可能性があります。
- 体重が急激に減っている:悪性腫瘍が背骨に転移しているケース、血液のがんなどが腰痛として現れることがあります。
- 悪性腫瘍の既往がある:どの部位であれ、がんと診断されたことがある方の新しい腰痛は精査が必要です。
- 外傷の記憶がある(骨粗鬆症のある高齢者):軽い転倒でも圧迫骨折が起きることがあります。これは整形外科で対応しますが、急性発症・安静時痛が目安です。
足のしびれの原因による受診先の違い
腰痛とともに起きやすい「足のしびれ」ですが、原因によって受診すべき科が変わります。
腰や背骨の問題から来るしびれ → 整形外科
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が神経を圧迫して起きるしびれです。「腰から下肢にかけて走る痛みやしびれ」「お尻・太もも・ふくらはぎ」という分布が多く、腰の動きと連動して悪化することがあります。
糖尿病性神経障害 → 内科(糖尿病専門)
糖尿病が長期にわたると、末梢の神経がダメージを受けて「手足の先からしびれる」「靴下を履いているような感覚がとれない」「足の裏がジリジリする」という症状が出ることがあります。
このタイプは腰の動きとは関係なく症状が出るのが特徴で、整形外科よりも内科での血糖管理が重要です。糖尿病と診断されたことがある、または健康診断で血糖が高いと言われたことがある方のしびれは、内科でも相談してください。
手根管症候群(手のしびれ) → 整形外科・神経内科
腰痛とは直接関係しませんが、手のしびれは「手根管症候群」という手のひら側の神経の圧迫が多いです。整形外科や脳神経内科で診てもらえます。
急性発症の片側の手足のしびれ+麻痺 → 救急
「急に片側だけしびれた」「手足が動きにくくなった」「顔がしびれる」という急性発症の症状は、脳梗塞の可能性があります。この場合は整形外科を受診している場合ではありません。すぐに119番か救急外来を受診してください。
腰痛と間違えやすい内科疾患
尿路結石
「脇腹から腰にかけて激しい痛みが突然起きた」「ジンジンする痛みが波のように繰り返す」「血尿が出た」という場合は、腎臓から尿管への結石(尿路結石)が疑われます。痛みの激しさは腰痛の中でもトップクラスで、「今まで感じたことのない痛み」と表現される方も多いです。
これは整形外科ではなく、泌尿器科または内科(救急外来)での対応になります。
腎盂腎炎
高熱と腰背部痛、頻尿・排尿時痛が組み合わさった場合は、腎盂腎炎(腎臓の感染症)が疑われます。叩くと響くような痛みが典型的で、これは内科や救急での抗菌薬治療が必要です。
膵炎・大動脈疾患
みぞおちから腰への強い痛み(特に背中に抜ける感じ)は、膵炎や大動脈解離という重篤な疾患のことがあります。背中が突然激しく痛くなった場合は、整形外科を待つことなく救急を受診してください。
受診前に準備しておくとよいこと
- 痛みはいつから・どの部位か
- 動作や姿勢で変化するか(前屈・後屈・回旋・歩行)
- 足への放散(お尻・太もも・ふくらはぎへのしびれや痛み)はあるか
- 発熱・体重減少・夜間痛・排尿症状はあるか
- がんの既往・骨粗鬆症の既往・最近の外傷歴
- 現在飲んでいる薬(特に骨粗鬆症の薬・血液をさらさらにする薬)
すぐに対応が必要なサイン
以下の状態は急いで受診してください(整形外科でも救急でも)。
- 肛門・股の間(会陰部)の感覚がなくなった・おしっこが出なくなった
- 下肢の麻痺が急速に進んでいる
- 腰痛+高熱
- 「今まで経験したことのない激烈な背中・腰の痛み」が突然始まった
よくある質問
Q. 「ぎっくり腰」になったとき、最初は整形外科と接骨院どちらがいい?
A. 急性期の強い痛みがある場合、まず整形外科を受診してレントゲンで骨折・重篤な疾患がないことを確認してもらうと安心です。接骨院(整骨院)は打撲・捻挫などの急性外傷には保険適用がありますが、疾患の診断はできません。
Q. MRIは整形外科でも撮れますか?
A. MRIを設置している整形外科クリニックは限られており、多くの場合は提携先の検査センターや総合病院に紹介されて撮影することになります。腰椎のMRIは椎間板・神経の状態を見るのに非常に有用です。
Q. 腰痛で内科に行っても診てもらえますか?
A. 発熱・体重減少・全身症状がある場合は内科でも診てもらえます。ただし内科ではレントゲン・MRIの整形外科的な評価が難しい場合があるため、必要に応じて整形外科への紹介になります。
まとめ
- 動作・姿勢で変化する腰痛・下肢のしびれ → 整形外科
- 発熱・体重減少・安静時痛・がん既往 → 内科で全身疾患の除外
- 糖尿病のある方の足のしびれ → 内科(血糖管理含む)
- 激烈な側腹部痛・高熱との組み合わせ → 泌尿器科または内科・救急
- 急に片側の手足が動かない → 救急
「腰が痛い=整形外科」という図式は多くの場合正しいですが、上記のサインがある場合は内科的な原因も念頭に置いて受診先を選んでください。迷ったときはかかりつけの内科に相談するのもひとつの方法です。
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